森田健作知事御用達の有識者会議はこんなにヒドイ!
ずっと八ッ場ダムのことを書いてきたが、足元の千葉県の教育が大変なことになっているので、今日は久しぶりに「地元ネタ」。
「教育日本一」「道徳教育を高校教科に」をマニフェストにうたった森田知事。
就任後、教育長に「武道大好き人間」の鬼沢氏、新教育委員に「新しい歴史教科書」系の野口氏など、「仲良し人事」を駆使して脇を固めてきた。
更に9月28日、森田知事肝いりの「千葉県の教育を元気にする有識者会議」をスタートさせ、いよいよ本格的に戦前回帰の超保守的管理教育へと、千葉県は舵を切ったのだ。
会議の委員は以下の表のとおり。(出席者のみ)
冒頭の知事のあいさつは、「日本人として誇りをもつ! 郷土と歴史をうやまい、国を愛する気持ちを育てる教育!」と、例によって威勢が良い。
ところが、「子どもたちだけが悪いんじゃない。大人も猛省しなければならない」などと言うから、ちょっと期待してしまったが、その続きがこうだ。「今は子どもの給食費を払わない親がいっぱいいる。モンスターペアレントだ」むむむ、この人は知事選のときの合同討論会でも、「給食費を払わないモンスターペアレント」を槍玉にあげていた。よっぽど給食費に深い思いがあると見える。しかし、格差が広がり子どもの貧困層が増えていることへの見識が全く欠如している。
さて、会議の座長に選出されたのが、エッセイストであり、共立女子大名誉教授の木村治美氏。
この人は「新しい歴史教科書をつくる会」の上部組織「日本教育再生機構」の賛同者でもある。座長就任のあいさつは、バリバリ右翼・新自由主義者としてまことに相応しいものであった。
「私は中曽根首相の『臨教審』に委員として参加したが、当時の理念『子どもの個性尊重』は間違っていた。これが日本の教育を悪くし、今のモンスターペアレントを生み出した。時計の針を元に戻してやり直したい。『友愛』などというわけの分からない言葉じゃダメ。しつけと道徳が大切。しつけの欠如している家庭教育に、教育行政がかなり関わることが重要だ」
この辺で気分が悪くなってきたが、あとがもっと凄かった!
自分で「国際俳優です!」と自己紹介した藤岡弘氏。体もでかいが声もでかい。朗々と響き渡る大音響でしゃべる、しゃべる。「世界中で信用されるのは、日本人の武士道精神。サムライ魂だ! 自分は世界中を回ったが日本人としてのアイデンティティー、日本人としての誇りが大切だ。真剣切りー!(意味不明)愛ある先祖の連鎖の末に、今の自分がある。人のために泣いた経験が大事であり、武士道精神が世界中から礼賛されるのだ」
声はドンドン大きくなり、もう止まらない、止められない。結局、武士道精神とサムライ魂を何回も連発して終ったが、中味がさっぱりない。だから、なんなの?と突っ込みを入れたいが、あまりの時代錯誤に反吐が出そうになった。
時代錯誤に関しては、更に「上」がいた。
日本大学教授の百地(ももち)章氏である。この人も凄かった。「子どもたちの元気がなくなったのは、愛国心の欠如からだ。自虐史観と偏向した歴史教育が子どもたちから自信をなくさせ、元気を奪っていった。社会規範とルールを教えるためにも道徳教育と愛国心を徹底させることが大切だ」
戦後教育を完全否定。これは戦前教育礼賛・回帰につながっていく。
上記の方々に共通するのは、子どもたちに対する深い洞察の欠如、一人ひとりの個性を認めず管理する対象として子どもを見る、縦社会順応型で従順な子どもを量産する教育を良しとしている点だ。更に、今の社会構造が格差を増幅させ、新たな貧困を生み、教育の機会均等が完全に崩壊していることへの認識がゼロ。ワーキングプアの若者がなぜ生まれているのか、生まれながらに教育環境が決まるような世の中になぜなったのか、彼らの脳細胞では理解不能だろう。
宮本委員以外はおしなべて、「道徳教育礼賛、しつけとルール優先」という路線の人々で、千葉県はどうなるのかと本気で心配になってきた。
今やオバマ大統領と鳩山首相が握手を交わし、世界の核廃絶をめざす時代。日本は戦前多大な苦しみを与えてしまったアジアの人々と、良い関係を結びながら、平和な国際社会を作る作業に邁進しなければならない。
そんなときに、亡霊のような「愛国心」や「道徳教育」の押し売り合戦。この会議で自己陶酔のように熱弁をふるっている委員さんたちを見て、ここだけが時計の針を戦前に戻し世界から取り残された場所になっている、と失神しそうになりながら思った。
だいいち、そんなに社会規範とルールが大事だというのなら、まずは森田知事のかずかずの不正疑惑や自称剣道2段のことなど、社会のルールをしっかり守れと、知事のお尻をひっぱたくべきだろう。