ご存知ですか?自立援助ホームを
今日本列島を席巻しているのが、官直人ならぬ、伊達直人=タイガーマスク。
児童相談所や児童養護施設へランドセルなどを贈る行為が新聞紙上を賑わせ、連鎖反応的に国内あちこちに、同時多発的にいろんな名前で出没している。
「とりあえず児童養護施設にスポットが当たって、いいんじゃないの」という声も多い。ところが、その延長線上にあるのに、全くスポットが当たらない施設が自立援助ホームである。
子どもが児童養護施設にいられるのは15歳まで。全日制の高校へ通学する場合は卒業(18歳)までいても良い。
しかし、その先、児童養護施設を出た子どもたちはいきなり世間の荒波に放り出されるのだ。
ほとんどが親からの虐待をずっと受けてきた子どもたち。15や18で社会に出て働くなんて、普通の子どもでもすごく大変なこと。まして、親からの虐待の傷を抱え、自分をどうしても肯定的に見られない、また大人を信頼できない、誰かを頼ることさえ学べなかった10代の子どもたちにとってはどんなに過酷なことであろう。しかも、この不況のなか自力で働いて食べていかねばならない。
そうした児童養護施設を出た子どもたちの就職や自立を支えようというのが、自立援助ホーム。全国で73か所、千葉県内には2か所ある。
本日訪れた君津市内の「人力舎」。施設長の高橋さんが丁寧に応対してくださった。人力舎は定員6人。現在は男子3人、女子2人が働きながら暮らしている。寮費として一人毎月3万円集めるが、あとは措置費でまかなう。以前は6人分の定額が国庫補助金として来ていたが、現在は人数に応じた額が措置費として来るので、5人なら5人分しか来ない。
しかも、子ども6人に対して職員は2.5人(正規職員2人+非常勤1人)と決められているので、金も人も全く不十分な状態である。
ただでさえ困難なケースの子どもたちをかかえ、せめて4人の職員は必要だと高橋さんは指摘する。
東京の施設「憩いの家」の施設長三好さんの談話からーーー
「退寮して16年ぶりに連絡してきた子がいる。その子が『憩いの家での生活がなかったら、今の自分はない』っていうから、なんで?と聞いた。そしたら『あの半年間、初めて安心して食べて安心して寝れて仕事に行く生活を送った。その後ダメになりそうになる度にあの半年間を思い出した。自分には立ち戻る場所がある。あの半年間がなければグチャグチャな人生の中で立ち戻る場所がなくて迷うしかなかった』って…」
安心して食べ、寝ることさえ手に入れることがむずかしい子どもたちのために、手を差し伸べることが、タイガーマスクだけではなく、私たち大人の責務ではないか。
ひったくり許さへん!大阪府の挑戦
実際は千葉県のひったくり件数も減ってきているのだが、それまでダントツのトップ(35年間!)
だった大阪が、前年度より1000件も減らしたことが大きい。
ちなみに、「ダントツ」というのは「断然トップ」の略語だそうで、そうすると「ダントツのトップ」というのは、「断然トップのトップ」となるわけで、ふむ?
その大阪へ直接ヒアリングをしたく、今朝は新幹線に飛び乗って大阪府庁へ日帰り視察をした。途中、関ヶ原のあたりが大雪で、新幹線が15分以上遅れ、ひやひや。
府庁では大阪府警察本部の職員の方々が対応してくださり、こちらの質問にていねいに答えていただいた。ひったくりの抑止策として大きな成果を上げているのが自転車のカゴカバー。機会あるごとに無料で府民に配り、普及に努めてきた。千葉県も現在見習っている。
ひったくり被害に会うのは意外にも20代が最も多い。20.5%
2番目が70歳以上の高齢者で、19.8%。
高齢者は分かるとしても、なぜに20代が多いのか?
駅から帰宅する夜道でイヤホンを着けたまま歩いているので、後ろから狙ってくるバイクの音に気がつかないことが多い。それに加えて、若者は自転車かごカバーを「めっちゃ、ダサい」と言ってつけたがらないそうだ。そこで、これまでのめっちゃダサいカバーではなく、高校生がデザインしたこんなかわいいカバーが登場した。

自転車かごカバー
あと、防犯カメラの設置、ビデオカメラ付きバイクの導入など、千葉県と同じ抑止策だ。と言うより、聞けば昨年9月に千葉県から大阪府に問い合わせがあり、いろいろアドバイスしたとのこと。
さすがに大阪では移動交番の新設はなかった。街頭犯罪が図抜けて多いので、移動交番の出番はないとか。街頭犯罪の2010年度の全国のデータをもらった。なかなかに興味深い。「自販機狙い」、なぜか愛知県がトップだ。

(図:街頭犯罪全国順位)
また、府民との連携を聞くと、7年前は1万人程度だった防犯ボランティアが、09年度末では18万人に達したとのこと。これは全国でダントツ・トップ。大阪の人間はおせっかいが多いからかもしれない。というのは冗談で、あの不幸な池田小事件のあと、子どもの見守りをしたいというボランティアが急増したという。
帰り道、府庁を出て谷町通りに行く道が分からず、歩いていたオッちゃんに尋ねたら、ホンマに親切に教えてくれはりました。おおきに。
犯罪も多いけど、人情もまだまだ捨てたもんやおまへん、大阪の街。
中央児童相談所を訪問
10月28日
県議会でもたびたび児童相談所に関する質問が出る。増え続ける児童虐待に追いつかない相談所の実態を、この目で確かめたく川本さんと訪問。
議員になる前に訪問したことがあるが、事態は更に悪化していた。
敷地3000平米に、狭いグラウンドと建物が並ぶ。
現在2歳から16歳までの子どもたちが25人。
下の写真の15畳の和室に、8人~10人が寝ている。
現在は小さな子どもが多いので、12~13人もこの一部屋に寝ている。
ここに入ってきた子どもは次の措置先(児童養護施設や里親など)が決まるまで、「一時保護」という形で暮らすわけだが、もちろん学校へは行けない。
子どもたちの学習の場は、離れの狭いプレハブの一室。落ち着いて勉強できる環境ではない。教員資格のある職員が教えているが、いろんな学年全部一緒なので、大変な苦労だろう。
小さな子どもたちは、この階段下のスペースを遊び場にしている。小さい子は狭い場所が好きなんだけど、ちょっと胸がふさがれる。
お風呂はフタもなく、すぐ冷えるから大変。最近シャワーがついたので年長の子は喜んでいるとか。
昭和47年に建てられた建物は老朽化が激しく、あちこちに大きなヒビが走っている。
親に虐待されたり、いろんな大人の事情でやむをえず入ってくる子どもたちが、この施設で安心して過ごせるだろうか? 建物全体をもっと広い敷地(倍は必要)で新たに建て替えるとなると、9億円必要だそうだが、国体に121億円も湯水のように使うなら、その一部を子どもたちのために回せないか。
また、高校の統廃合で不要な校舎が出れば、それを再利用することもできる。
今後、県有の建物全てを精査し、「すでにあるモノ」をうまく再利用していく、すなわちファシリティ・マネージメントが千葉県も絶対必要ではないか。
森田知事は何かと言うと「アクアライン800円化」の○○の一つ覚え。国交大臣に、国が全部負担してくれと派手なジェスチャーで訴えている写真が新聞に出ていたが、その前にやるべきことは、このような子どもたちの施設に予算をつけることではないだろうか。
シシャム、みちのくを行く!その④、プラス 駆け足日記
3時間にも及ぶヒアリングを行った。主なものを書くとーーー
1. 自殺対策
秋田県は人口10万人当たりの自殺率が、15年連続全国1位となっている。7年前をピークに自殺者の数そのものは確実に減っているのだが、分母である「人口」が減り続けているので、いつまでたっても自殺率は下がらない。
それはともかく、秋田県の自殺対策は、早くから民間との連携を密にしてきた経緯があり、実に細やかだ。2年前、自殺現象の立役者となった秋田県民センターの伊藤彬さんを訪ねて日帰り訪問したが、その後どうなったかも聞きたかった。
ヒアリングによると、当時よりもさらに民間団体との連携が進み、今年7月には民間が中心となり県がサポートする「秋田ふきのとう県民運動」が立ち上がった。全県一体となって自殺予防を進めようとする運動である。
自殺の大きな原因は健康不安や経済状況の悪化であるが、直接的には「うつ病」が自殺の引き金となることが多い。そこで秋田県はこのようなパンフをあちこちに配布している。

自殺を止めるには、その人の生活そのものを支え、再建していくサポート体制が不可欠だ。湯浅誠さんが提唱する「パーソナル・サポート」制度。秋田県がめざしているのも同じ方向だと感じ入った。
千葉県は10万人当たりの自殺率は確かに全国標準よりも低い。しかし、自殺者数は毎年1200~1300人もいる。全庁的な取り組みに本腰を入れるべき時期だ。
2. 学力テスト
今回の視察で最も心を打たれたのが「学力テスト」だった。毎年日本一の成績をあげている秋田県の真髄を見た思いがする。詳細は後日にゆずる。
視察のことばかり書いていたので、毎日の記録が抜けてしまった。
ちょっと気分を変えて、その御報告を。
8月21日(土)【坂の上の雲のどこが問題なのか】
佐倉市でやって大変好評を得た醍醐聡さんの講演会を、県ネットで開いた。今回は佐倉のときよりもエピソードが豊富で、朝鮮王朝最後の皇太子が伊藤博文によって11歳のときに人質として日本に連れてこられ、日本の宮家の女性と結婚させられた話が印象的だった。
この女性梨本宮方子(なしもとのみやまさこ)さんは、衝撃的なことを後日自伝で書いている。「自分は子どものできない体だと医師に診断された。だから、朝鮮王朝の血統をとだえさせるために皇太子と政略結婚させられたのだ」
しかし、方子さんは子どもを二人産んだ。長男は生後8カ月で突然死亡。毒殺されたと言われている。また、皇太子には朝鮮に婚約者がいた。この女性も「婚約」の事実を抹消するため日本軍から迫害を受け、中国上海に亡命。生涯結婚することもなく、異国で数奇な一生を終えた。
日本の朝鮮侵略のかげで、二人の女性が大きく人生を狂わされることになったのだ。

写真:李皇太子と方子さんの新婚当時
日清戦争、日露戦争、そして満州事変から太平洋戦争。すべてはつながっていることがよく分かる学習会だった。
8月22日(日)【市民ネットワーク千葉県臨時総会】
規約改正のための臨時総会を開くことになった。
ネット活動の財源となっている議員報酬。どの自治体も議員報酬は減り続けている。しかし、ネットの代理人(議員)が個人的に受け取る「議員手当」はずっと見直されることなく続いてきた。パイが減ってきているのに議員手当が変わらないということは、ネット活動費に回す分がやせてきているということだ。これでは豊かな活動ができない、というわけで、今年1月から活発な議論を続けてきた。
結論としては「これまでネットが受け持ってきた国民年金保険料を自己負担にしよう」。
この日は先日の参議院選挙でネットが推薦した道あゆみさん(民主党)をゲストに迎え、私がインタビューを受け持った。

道さんが選挙戦を通じて訴えた「子育て支援」や「男女共同参画」、「児童虐待」など、ネットとしても取り組んできた課題なので、いろいろ話が弾んだ。選挙では、これらのことよりも、「経済対策」「雇用の安定」など「明日のことより今日のメシ」が票につながる。
有権者にどうアピールしていくか、むずかしい問題であるが、道さんの「言葉を工夫し、相手を否定することなく、包み込むように訴えていく」というアドバイスが心にしっかりと残った。
シシャム、みちのくを行く!その③
8月18日(水)北秋田市民病院
青森県から秋田県に入る。
まずは、先日のNHK教育テレビで話題となった北秋田病院へ。地域の中核病院が古くなり、周辺の2病院と統合して大きな医療センターになった。千葉県の九十九里医療センター構想と似通った経緯なので、視察に入れた次第。
今年4月にオープンしたばかりの北秋田病院。建設費95億円。広大な森の中に作られたまるでホテルのような瀟洒な病院だが、オープンと同時に医師不足。当初の計画では医師31人だったが、半分の15人しか集まっていない。ベッド数も当初320床予定が今は177床。当然経営は苦しく、初年度でいきなり4億3800万円の赤字の見込み。
秋田県は千葉県と違い県立病院はなく、農協のJA秋田厚生連が医療圏をになっている。
北秋田市民病院も最初から厚生連が指定管理者となって運営している。
担当の方の説明をいろいろ聞いたが、見通しの暗さにこちらまでため息が出た。
各地で豪華な病院建設があとを絶たない。しかし、デラックスな箱モノを建てればお医者さんが来てくれるという発想は、もう変えたほうがいいのではないだろうか。建設費がかさめばかさむほど、オープン以後は医師の負担が重くなる。お医者さんは医療に専念するだけではなく、建設費(借金)返済の重荷までどっかりと背負わされるのだ。どれだけ立派な建物を建てても、中身に魅力がなければ医師は寄っても来ないだろう。
このあと、一路八郎潟を埋め立てて造られた村、大潟村へと向かう。
大潟村の宿泊施設で、コメ農家の坂本さんと合流。大潟村の歴史を聞きながらの夕食となった。
8月19日(木)大潟村
朝一番、大潟村農協事務所で坂本さんから昨夜の続きをレクチャーしてもらう。
坂本さんは昭和46年から村に入植し営農を開始。しかし国の方針転換に翻弄され、当初の約束10町歩の稲作ができない。次第に人人は「ヤミ米」づくりに励むようになる。最初は一人、翌年は二人、8年後には589戸のうち、実に309戸がヤミ米を作るようになった。
坂本さんは「ヤミ米」のことを「自力更生米」と呼んでおられる(!)
このあと広大な水田を案内してもらう。見渡す限りの青いたんぼ。当然のことながら整然とした区画整理。
(

坂本家の前で記念撮影。住宅地はなかなかの豪邸が建ち並び、「苦難の大潟村」のイメージはひっくり返った。

この項続く。